いろいろないろ
廊下からリビングルームを眺める。色面構成のような空間
築50年余りのリノベーションを検討するときにかんがえたこと

物件#002『コーゾージ・ヴィンテージ』のリノベーションに関してまず目指すべき方向性として考えた事はこの団地が持つ「古さ」をデメリット一辺倒な物として認識したく無い、という事でした。
綺麗なフローリングを張って、綺麗なクロスを壁、天井に貼り、照明器具を新品に変えればリフォームとしては完了です。ですがそれは「古さ」を完全に劣った物として認めてしまう事では無いでしょうか。それはせっかくこの空間、団地全体がこれまで築いてきた空気感に目を向ける事なく大雑把にバサッと蓋をしてしまう様な行為に感じられてしまって、とても惜しい。
そう考えたときに一層の事、新しくする事を辞めて「古さ」をより加速させて新たな「レトロ」感を持った世界感、そして元来の佇まいを残しつつこの高蔵寺ニュータウンの可能性を表現できればと思いました。

どの様な色彩なのか?

ときに強い色相、かつ彩度的にはぐっと落とした色の中にはビンテージ感やレトロ感、それもなんとなく東欧の異国感的な趣きを感じる事ができたり(勝手なイメージですが)、この古い団地に元々存在していそうで、、でもやっぱり存在していなかった新しい要素、そんな不思議な情緒を呼び起こす要因となれば面白いな、と。
リノベーションテーマは『新しく、古めかしく』。

オレンジ〜サーモンピンクの中間的な色彩が正面に施されたリビングルーム
抽象絵画の様な

プラン的には間仕切りを撤去してワンルーム空間としていますが、古い建物であるが故にワンルームにした事によってより存在感を増す梁や構造上の袖壁、またもともと少し低めの天井高という要素もあってワンルームとは言えいろんな色面が折り重なって視界に入ってきます。空間というより抽象絵画を見ている様な視点が散在する面白さがあります。

廊下の眺め。白とグレーベージュを基本とした色調にピンク、濃紺といった差し色がチラ見えする。
色の組み合わせ

また、当たり前ですが直方体状の空間であれば必ず2面の壁と天井面によって、3面の色が接触する箇所が生まれます。通常であれば多くても2色で収まる事が多いですが今回は3色になる箇所が何箇所かあるのでその組み合わせは慎重に構成しました。塗装サンプルを何回も並べ直して検討をしていきます。

塗装サンプルで確認。隣り合わせる色の組み合わせ。

とは言え、何を持って色彩構成の根拠とするのか?また、「レトロ・ビンテージ」と言い切って良い色彩に定義はあるのか?正解の無い色選びはいつも困難です。
建築インテリアの世界において色彩計画学という分野はありますが、あくまで最大公約数的な正解に辿り着くためのであり、今回の様なニッチな所を目指すプロジェクトに於いてはこういった学問的なアプローチは残念ながら機能せず、もっとファッションや個人的な感覚に落とし込んで決定していくという事は多々あります。建築に於いてもプロジェクト規模が小さくなればなるほどそういう傾向があるのでは無いでしょうか。
そんな色彩決定のプロセスの中で、写真にあるような塗装サンプル(A4サイズの塗り見本。指定した色番号通りにほぼどんな色でも作ってくれる)はとても貴重で、このサンプルから得られる情報は沢山あります。

単純に品番の確認だけでは無く、他の色との組み合わせ、明るい所から暗い所での見え方の差、自然光と照明の光での見え方の差、面積が大きくなった時の見え方の想像(一般的に面積が大きくなる事で色は淡く見える)など、想像力をフル動員するために沢山の情報を与えてくれる物です。

生活空間における色
あえて壁面と一体化するカウンターと洗面台

日常生活の中でどこか特定のひとつの色面をずーっと眺めるという場面があるわけではありませんが、ご飯を食べたり、廊下を歩いたり、顔を洗ったり、ベッドに横になって天井を見上げたり、料理をしたり、、、いろいろなシーンの中で色面が無意識に視界に入ってきます。
ファッションに関してついつい自分の好みの色の服を着続けてしまったりといった事もある様に、空間においても自分にとっての心地よさや、相応しいと感じる色がやはり存在して生活の満足感を上げる要因としてもっと意識されていくと良いな、と常日頃より感じています。(井村)

COLUMN #003
いろいろないろ
TEXT:井村
PHOTO:danchitechts